オシレーター系のテクニカル指標で「サイコロジカルライン」と言うものがある。見た目や値動きはRSIによく似ているようなインジケーターになるが、内容は全く異なるものだ。
サイコロジカルというのは「心理的」と言う意味で、相場の心理状態をチャートとして表し、相場が今強いのか?弱いのか?を判断するためのテクニカル指標になる。まさに鉄板的なオシレーターの使い方だ。
市場心理としては、強い上昇がくると「そろそろ下がるだろう」と逆張りの心理が働き、さらに上昇が続くともっと上がるんじゃないのだろうか?と順張りの心理が働こうとする。
そして一気に相場が過熱して火柱が立った直後に下落相場が始まるパターンというのもまた鉄板的な相場心理になる。
サイコロジカルラインは、そんな心理をなんとか逆手にとってエントリーポイントを探れないか?といったような思惑のテクニカル分析になる。ではサイコロジカルラインの基本的な使い方について見ていこう。
サイコロジカルラインの基本的な設定と計算式
サイコロジカルラインは他のテクニカル分析のように「計算式」という算出方法ではなく、「統計」という計算方法で算出される。
統計の内容としては、過去12日間の勝敗(前日比)で価格が上昇した日は勝ち、前日よりも価格が下落した日は負けとしてカウントし、過去12日間の勝敗を確率で表したシンプルなものになる。
サイコロジカルラインの計算式
では具体的にどう言った計算方法なのかを見ていこう。下記図は12日間の日経平均価格推移勝敗表になる。
日 | 終値 | 前日比% | 勝敗 |
---|---|---|---|
2020年04月24日 | 19,262.00 | -0.86% | ● |
2020年04月23日 | 19,429.44 | 1.52% | ○ |
2020年04月22日 | 19,137.95 | -0.74% | ● |
2020年04月21日 | 19,280.78 | -1.97% | ● |
2020年04月20日 | 19,669.12 | -1.15% | ● |
2020年04月17日 | 19,897.26 | 3.15% | ○ |
2020年04月16日 | 19,290.20 | -1.33% | ● |
2020年04月15日 | 19,550.09 | -0.45% | ● |
2020年04月14日 | 19,638.81 | 3.13% | ○ |
2020年04月13日 | 19,043.40 | -2.33% | ● |
2020年04月10日 | 19,498.50 | 0.79% | ○ |
2020年04月09日 | 19,345.77 | -0.04% | ● |
前日から価格が上昇した日は勝ちとし○、逆に前日よりも下降した日は●としている。この勝敗でいうと4勝8敗と言うことになるので、これをもとに計算していく。計算式は下記のようになる。
○の日が4日間なので4÷12×100。つまり上記の表で言うとサイコロジカルラインは33.33%ということになる。
サイコロジカルラインの設定
今までは過去12日間の設定で計算してきたが、サイコロジカルラインの設定は何も12でなくてはならないわけではない。
過去何日分の設定にするかは個人の自由で、各証券会社のデフォルトで設定されている数字は基本的に「12」になるが、根拠は基本的にない。例えば設定の数字を「21」に変えてみる。
その場合は○÷21×100という計算式になるだけで理屈は変わらない。しかし、サイコロジカルラインの12にはそれなりの理由がある。
それはオシレーターとして1番判断がしやすいのが12という数字設定だからだ。その理由をくわしく説明していこう。
サイコロジカルラインの設定は大きく変えてはいけない
サイコロジカルの設定を大きく変える事は推奨できない。なぜなら、勝ちと負けの割合というのは回数を重ねるごとに、50%に近づいていく習性があるからだ。
ジャンケンで考えてみても分かる通り、最初は2勝8敗などという数字になったとしても回数を重ねていくうちに58勝42敗や、278勝222負などと言ったように50%前後の確率になってしまい、設定を大きくするという事は確率の信憑性が薄くなることが言える。
設定を長くすると、サイコロジカルラインの動きは小さくなり、設定が短いほど動きが大きくなる。この事から設定はあまり変えずに「12」が1番オシレーターとして機能すると言えるだろう。
サイコロジカルラインの見方
サイコロジカルの見方はいたってシンプルなものだ。高い%を表示しているときは過去12日間で前日の終値から上昇している事が多かった事を示し、低い%を示している時は前日の終値から下降している事が多い事を示している。
上記のサイコロジカルラインのチャートでも一目瞭然でわかるが、赤い丸印のところは過去12日間の勝率が高かった事を示し、青丸印のところは勝率が低い状態を示している。
野球選手の打率みたいなものだ。
時間足によって「解釈」を変える
今までの説明は日数で考えてきたが、当然チャートにはいろいろな時間足があり、当然日足だけではない。もちろんサイコロジカルラインはどんな時間足でも使用可能だ。
例えば15分足であれば、過去15分単位でのロウソク足の終値を参考にしてサイコロジカルラインが形成され、1時間足であれば過去12時間分、つまり12本分のロウソク足の終値を参考にしてサイコロジカルを表示させてくれる。
サイコロジカルラインの注意点
サイコロジカルラインは単純明確なテクニカル指標で使いやすいのが特徴だが、買い場や売り場を探るには何とも頼りがいのないテクニカル指標になる。例えサイコロジカルラインの%が高い位置にあったとしても逆張りの売りサインとはならない。
なぜなら、サイコロジカルラインには過去の勝敗だけにスポットが当てられている為に「どれくらいの値動きをしたのか?」ということには全くフォーカスしていない。
つまり、日経平均に当てはめてみても、1円上昇していようが、1000円上昇していようが、サイコロジカルラインからしてみれば、どちらも同じ「1勝」になる。
このようにサイコロジカルラインでは「エントリーポイントを探る」という使い方はまずできないということになる。
サイコロジカルラインはRSIと相性がいい
ではサイコロジカルラインはどのように使ったらいいのだろうか?実際にサイコロジカルラインのチャートを見てみると、それなりに%が高い位置になると下落、低い位置になると上昇の傾向があるが、これはただの統計であり傾向だ。
あえていうなら、サイコロジカルラインは他のテクニカル分析「RSI」と相性がいい。RSIについての基本知識は「RSIの見方と基本知識をわかりやすく解説」の記事をチェックしてみよう。
ではRSIとサイコロジカルラインについての相性についてみていこう。
RSIとサイコロジカルラインのダブル表示
上記チャートではサイコロジカルラインとRSIを同時に表示させているが、見比べてみると非常によく似た動きになっているのがわかる。
RSIの基本的な見方としては、70%より上に抜けたら高値圏、30%を下に抜けたら安値圏ということになり、視線は逆張りの視線になる。もちろんRSIなどのオシレーターは他のトレンド系の指標などのサブ的なものなので、RSIだけでエントリータイミングにはならないが、RSIをさらに優位性をもって見るにはサイコロジカルラインを組み合わせるという考え方もある。
サイコロジカルラインとRSIを見るタイミング
例えばサイコロジカルラインが高値圏で推移していたとする。つまり、12日間で上昇した日数が多いということだ。
その時RSIが高値圏にまで行っていなければ、全体的な値動きがそんなに強くないと見て様子を見る。その後サイコロジカルラインが高値圏を推移しつつ、RSIが高値圏に突入してくれば逆張り。
理由は、サイコロジカルラインがある程度高値圏を推移してきたという事は、上昇の日数が多く、その後RSIが高値圏まで上昇してきたという事は最後の楽観的な買いが発生して、これから下落する可能性が高いという予想ができるというものだ。
もちろんそのまま大きな上昇につながる可能性もあるので、他のメインのチャート分析などをしっかりやっていくのが基本だが、ロスカットなどをしっかり仕込んでエントリーチャンスとして見てみるのもひとつの戦略として考えられる。
まとめ
サイコロジカルラインの基本的な使い方などを解説してきたが、サイコロジカルラインは非常にシンプルで単純なテクニカル分析指標になる。
しかし、単純なものというのはある意味基本であって、その計算方式が把握しやすい事から、分析の本質的なものがわかりやすいという非常に大きなメリットがある事は確かだ。
難しい分析手法などをあれやこれやと使うのもいいだろう。しかし、自分がなぜこの分析手法を使っているのかを把握して使うにはサイコロジカルラインが全くダメかと言われればそうではない。
まずは自分で使ってみて、他のテクニカル分析のサブとして使えるかどうかは、自分自身で判断していこう。