エリオット波動での衝撃波とは上昇の1波・3波・5波、下降のA波・C波だ。この衝撃波というものだが、実際には絵に書いたようにエリオット波動が描かれるわけではなく、いくつかの波動の特性がある。
その特性こそが変形パターンであり、エリオット波動の基本パターンをさらにパターン化した内容になっている。基本的に5波によくみられるパターンが多く、トレンド変換を示唆するものがメインになってくる。今回、衝撃波の変形パターンとして紹介するのは
- エクステンション
- ダブルリトレースメント
- ダイアゴナル・トライアングル
- フェイラー
の4パターンだ。では衝撃波の特徴と変形パターンについて見ていこう。
エクステンション
衝撃波の変形パターンとしてまずあげられるのが「エクステンション」といわれるフォーメーションになる。簡単にいうと、エクステンションとはまさに波動の延長で、上昇5波構成がもっと多くの波の構成に見えるというそんな状態だ。
特に3波のような大きな波動を形成する時などは、比較的エクステンションが起きやすい傾向にあり、エクステンションは意外と多く見られるものになる。
エクステンションの特徴
上記チャートを見てみよう。4波までは実に素直にエリオット波動を形成しているが、5波に関しては1度終わったかのように見えて、もう1度押しを作り再度上昇している。この場合見方によっては9波動のような波の構成に見える。
ひとつの波動が終了したかに見えて、同じ波動の中でそれ以上の波を作ることをエクステンションと言う。
エクステンションの最大の特徴としては、同じ上昇の衝撃波3波動(1波・3波・5波)の中で、どれかひとつしかエクステンションをしないという特徴だ。
上記チャートでは3波がエクステンションしている例になる。3波はフィボナッチエクスパンションにて161.8%でぴったり止まっていて、この波が3波である事を理由付けている。
そしてエクステンションした波以外の波動は似たような波を描くという傾向もある。これは下落の3波動でもまた同じ事が言える。
エクステンションの注意点
エクステンションの注意点としては、波動がどういう結果になったかというのが、後にならないと分からない。どの波も素直に動くとは限らず、エクステンションが起きる可能性があると見込んで、エントリーの際にはロスカットをきっちり設定しておく必要性があるだろう。
もし3波でエクシテンションが起きていたのが発見できていたら、その後の5波からのA波は非常に捉えやすくなる。
なぜなら3波がエクステンションしたという事は、基本的には5波はエクステンションをしないという事が予想でき、1波の波を見る事によって5波がどういう波動になるかもまた予想する事ができる。
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ダブルリトレースメント
ダブルリトレースメントとはエリオット波動5波終了からの波についての特徴だ。5波にエクステンションが発生した後に起こるのが、このダブルリトレースメントという変形パターンになる。
特徴としては5波が付けた最高値から5波のエクステンションが開始された水準まで下落する。これはA波、もしくはA・B・Cの3波動になる場合もあるが、その後、次のB波が再び5波の最高値を試す上昇になるというのがダブルリトレースメントだ。
上記チャートでは5波のエクステンションの起点で一旦下落が止まっているが、上値を試すほどの上昇には至っていない。この事から上昇の勢いは弱く、その後に大きな下落の波が来るという事が予想できる。そして、この場合のフォーメーションは結果的に天井を3回付ける事による「トリプルトップ」になるという特徴がある。
もちろん下落の3波動で「5波エクステンションの起点」まで下落し、その後5波の高値を更新する上昇3波になる事も珍しくない。その場合は、上位足が上昇トレンドを継続しているなどの強い上昇の押し目となっている場合がある。
余談だが、こうしたダブルリトレースメントの後は、高値切り下げの天井を3つつけることも多い。基本的に3つ目の高値でショートを狙うのが定番のエントリータイミングになる。
ダイアゴナル・トライアングル
ダイアゴナル・トライアングルはエリオット波動では5波とC波でしか出現しないと定義付けられている。上昇5波に下記チャートのようなウェッジが出た場合は基本的にこれからの強い下落を示唆している。
逆に下落のC波に下記のようなウェッジが出た場合はこれからの強い上昇を予想しなければならない。ダイアゴナル・トライアングルはトレンド変換の強いシグナルという風に捉えることができる。
フェイラー
フェイラーとは衝撃波5波とC波で見られるパターンで、エリオット波動ではよく使われるメジャーなものになる。このフェイラーに関してもダイアゴナル・トライアングルと同じように大きなトレンド変換の予兆として使われることが多い。
本来ダウ理論的にいうと、上昇トレンドは前回の安値を割りこまず、前回の高値を超えていくものとしている。
そう考えると、5波は3波の高値を超えていき、C波はA波の安値を基本的には下回らなくてはいけない。それに対しフェイラーという状態は
- 5波が3波の高値を超えられない
- C波がA波の安値を下回らない
と言ったパターンになる。
5波にフェイラーがかかると、買いの勢いよりも売りの勢いが強いという状態なので、その後強い下落になる可能性が高くなるという認識だ。
逆にC波にフェイラーがかかるとその後に上昇の勢いが強くなると予想できる。フェイラーもまたトレンド変換の重要なシグナルとして見ていくという事になる。
まとめ
今回はエリオット波動の変形パターンについて、4つの特徴を解説した。基本的に衝撃波の変形パターンは5波を用いてのトレンド変換が重要な要素になってくる。
しかし、ここでも大切なのは、今回紹介したフォーメーションが絶対ではないというところだ。
フェイラーひとつにとっても、3波の高値を5波が超えられなかったとしても、その後必ず強い下落につながるとは限らないという事だ。ただし、フェイラーというものを認識する事によって「そうなるかもしれない」という意識を持てるという事だ。
そしてこの変形パターンもまた相場心理が大きく影響してできるチャートのフォーメーションであって、エリオット波動の定義が崩れる時などにも「なぜそうなっているのか?」ということを考えていく事が重要になってくる。
そして衝撃波の変形パターンを知る前に必要になってくるのもまたエリオット波動の基本的な知識と認識だ。エリオット波動理論とは|基本知識を完全網羅