テクニカル分析のインジケーターで最大の基本「移動平均線」を解説していこう。移動平均線には単純移動平均線(SMA)や指数移動平均線(EMA)など大きく数種類あるが、今回は移動平均線の基礎知識「ゴールデンクロス・デッドクロス」「パーフェクトオーダー」など、これだけ覚えておけば大丈夫という移動平均線の基本についてお話しさせていただこう。
さらに移動平均線に対しての本質的な考え方なども交えて解説していくので是非参考にしてほしい。
移動平均線の基本知識を知る
まずは基本となる移動平均線の種類や設定について見ていこう。
移動平均線の計算式
基本的に移動平均線とは過去数十日あるいは何百日という価格の平均価格の推移をグラフで表したものになる。例えば20日移動平均線ならば、過去20日の終値の価格を平均させたものと考えておけば大丈夫だ。
20日移動平均線と100日移動平均線と比べると、過去の値動きに対して対象日数が短いほど現在の値動きに対してダイレクトに動く事となる。それは対象とする過去の平均日数が短いからで、「移動平均線の日数が長くなればなるほど強い抵抗線」となる。
つまり、移動平均線の線が現在の価格より下にあるということは、指定した過去の平均価格より現在の価格が高いという事になる。
それでは一番メジャーな「単純移動平均線」と「指数平滑移動平均線」について見ていこう。
SMA単純移動平均線の計算式
単純移動平均線はSMA「Simple Moving Averege」といい、単純移動平均線の算出方法は、指定した日数の過去の終値の平均値を線で結んだものというシンプルな計算式で作られる。
例えば25日移動平均線なら、過去25日分の終値の平均が現在の移動平均線の位置になり、単純移動平均線は移動平均線の中でも1番メジャーなものだ。
基本的にはこの単純移動平均線を覚えておけば問題はないだろう。
EMA指数平滑移動平均線の計算式
指数平滑移動平均線は(Exponential Moving Average)EMAという。
指数平滑移動平均線の算出方法は、指定した日数の過去の終値の平均値を線で結んだもので直近の価格に比重を置いたものという計算式で算出される。
バランスよく過去25日分の平均値を出すよりも、過去の価格よりも現在に近い価格の方が重要度が高いのではないか?ということで直近の価格に比重を置いた計算式、というのが指数平滑移動平均線の考え方になる。
単純移動平均線(SMA)と指数平滑移動平均線(EMA)はどちらを使用すればいいのか?
基本的に別にどちらを使った方がいいというものはないが、計算方式の関係上、指数平滑移動平均線の方が値動きに対する反応が早いのが特徴だ。しかしここで考えておかなければならないことがある。「移動平均線に値動きに対する反応の早さは必要なのだろうか?」という疑問だ。
移動平均線を売買シグナルとして使用するなら指数平滑移動平均線を選択するのもいいだろう。もちろん大前提は勝てるならなんでもいい。
しかし、移動平均線だけを頼りにエントリーポイントを決めていくというのは売買戦略としてはあまりに安易すぎる。エントリーのタイミングは移動平均線だけで判断するものでは決してない。
移動平均線は相場環境を知る為のひとつの物差しとなるものであって、エントリーシグナルではない事だけは覚えておこう。トレーダーによっては移動平均線をエントリーの基準で使っている人もいるが、あくまでもそれは相場の値動きを見て判断しているので、移動平均線だけで判断しているわけではない。
では移動平均線の時間足設定について見ていこう。
移動平均線の時間足設定は何日がいいのか?
それでは、移動平均線の設定についてだが、これは興味のある部分ではないかと思う。しかし残念ながら移動平均線の設定は何が良いというものはなく、正直な答えを言うと、取引スタイルなどによって自由に選択して行ったら良いというのが正直なところだ。
しかし、それではあまりにもアバウトなので、よく使用されている移動平均線の設定値を紹介しておこう。
まずは20MA・21MA・25MAという短期移動平均線だ。ただし20と21というのはほとんど変わりはないので、どちらを使用するかなど迷う必要はない。20MAか25MAどちらかで構わない。
そして鉄板的に使用されている中期線が50MA・60MA・75MAだ。国内ではあまりメジャーではないかもしれないが、海外では実に使っているトレーダーが多い。
長期線としては100MAと200MAだ。特に200MAは移動平均線で最も注目されていると言っても過言ではない。
15分足ならば1本のロウソク足が15分の値動きしかないので、100MAなら1500分(25時間分)、1時間足なら100時間分の平均値を示しているというだけだ。
ただし、ここで考えておかなければならない事がある。同じ移動平均線の設定でも時間足が長くなればなるほど過去に遡った値になるという事だ。
つまり移動平均線の設定が大きければ大きいほど非常に強い指標となり、より長い過去の平均値という事になるので相場の流れは把握しやすくなるかもしれない。もちろんトレードスタイルにもよるので一概には言えないが、5分や15分などの短い時間足で、設定がさらに短期になればなるほど移動平均線を表示させるメリットは少なくなる。
短期足でトレードしていても長期足の移動平均線を参考にするのもひとつだ。
移動平均線の基本的なチャート分析
では移動平均線を使ったチャート分析の基本知識を紹介していこう。移動平均線を使ったチャート分析にはいろいろあるが、今回は最低限知っておけば問題ない基本知識を紹介していくが、代表的なもので
- 移動平均線の方向性
- グランビルの法則
- ゴールデンクロス(デッドクロス)
- パーフェクトオーダー
というあるのでひとつずつ紹介していこう。
トレンド発生時の移動平均線の位置と方向性
トレンドが発生していると移動平均線はある一定の場所に落ち着く性質がある。これはトレンドによって過去の価格の平均と現在の価格が同じ方向に動き続ける為だ。
【上昇トレンドの位置】
上昇トレンドの場合は移動平均線はロウソク足の下に位置していて、右肩上がりに上昇していく。
【下降トレンドの位置】
下降トレンドの場合は上昇の逆で、ロウソク足の上に移動平均線が推移していく。
【トレンドが発生していない時の位置】
トレンドが発生していない時は値動きの中を移動平均線が方向感なく推移する。
移動平均線の設定などによって、価格との乖離の差が当然のようにある。設定によっては必ずしも上記チャートのようになるとは限らないので注意しておこう。
移動平均線のチャート分析理論【グランビルの法則】
グランビルの法則は移動平均線を使った法則で4つの上昇トレンドと4つの下降トレンドの移動平均線を使用した合計8つの法則からなるもので、移動平均線を使うなら必ず知っておきたい基本的な分析理論だ。内容に関しては
- 価格と移動平均線のクロスによるトレンド変換
- 押し目買い
- 一度移動平均線を割り込んでからの反発
- 移動平均線と価格との乖離
という4項目になり、グランビルの法則についてはグランビルの法則とは|4つの買いパターンを詳しく解説の記事など、数記事で詳しく紹介しているのでそちらをチェックしてほしい。
ゴールデンクロス(デッドクロス)
これは非常に有名でトレーダーなら誰でも知っているものになる。しかし注意して欲しいのはこのクロスはエントリーポイントなどのシグナルではないという事だ。
ゴールデンクロスするということはどういうことなのか?それは今までの長期の平均価格を短期の平均価格が上抜けるという事になり、つまり直近で上昇の強い値動きが継続してあったという事だ。ではゴールデンクロスとはどんな考え方をすればいいのだろうか?
ゴールデンクロスの考え方
ゴールデンクロスが起こったと言うことは直近に上昇の値動きがあったという事なので、もちろんこれからも上昇する可能性はある。しかし上図のゴールデンクロスBのように、直近でゴールデンクロスしたもののすぐにデッドクロスする下落がくる可能性も大いにありえる。
値動きがあったからこそ長期と短期の平均価格が逆転したわけであって、ゴールデンクロスしたからこれから価格が上昇するといったわけではないので覚えておこう。さらにゴールデンクロスしたのに価格が下落した時に、一般的にいう「ダマシ」とは言わない。
大切なのは、ゴールデンクロスしたあたりの値動きの状況だ。一概にゴールデンクロスと言っても非常にアバウトなもので、クロスした移動平均線の設定によってもゴールデンクロスの場所は千差万別だ。
2種類のゴールデンクロス(デッドクロス)のパターン
ゴールデンクロスには基本的に2種類のパターンがあるので、ひとつずつ説明していこう。
移動平均線同士のクロス
まずひとつめは、2種類の移動平均線同士のクロスになる。
長期線を短期線が上に抜けた時がゴールデンクロスで、デッドクロスはその逆になり、長期線を短期線が下に抜けた時にデッドクロスと言う。
短期長期ともに同じ方向を向いている時(ゴールデンクロスであれば短期長期共に上向き)のクロスはより強い上昇傾向にある。理由としては、短期長期共に過去の平均価格が上昇している為といえる。
ロウソク足と移動平均線のクロス
移動平均線同士のクロスではなくロウソク足と移動平均線のクロスもゴールデンクロス(デッドクロス)と言われる。こちらのゴールデンクロスは現在の価格を指定した過去の平均価格が上抜いてきたという事になり、下降トレンドから上昇トレンドに切り替わる際は必ずこの現象が起きる。
パーフェクトオーダー
3本以上の移動平均線の並びと方向でトレンドの強さを視覚的に見るというのが「パーフェクトオーダー」と言われる状態をいう。
赤い四角で囲んである部分がパーフェクトオーダーの並びだ。順を追って説明すると、上昇トレンドの場合は移動平均線の並びが上から短期(赤)中期(緑)長期(青)の順にキレイに並んでいるのが確認でき、逆に下降トレンドの場合は上から長期、中期、短期の順で並んでいるのが分かるだろう。
例えば下降トレンドからの上昇トレンドであれば上から
- 長期 ⇒ 中期 ⇒ 短期
- 長期 ⇒ 短期 ⇒ 中期
- 短期 ⇒ 長期 ⇒ 中期
- 短期 ⇒ 中期 ⇒ 長期
という感じで移動平均線の順番が入れ替わっている。この移動平均線の並びでは違う日数の過去の平均価格がどのように交わっているのかが見てとれる。上昇トレンドでは3本の移動平均線は毎回同じ並びになり、下降トレンドでも毎回同じ並びになる。
今回の移動平均線は短期「25日」中期「50日」長期「75日」で設定している。設定は個人の判断になるが、あまりに短期の設定と長期の設定がかけ離れているとほとんど意味がない。中期線は短期線と長期線の中間の期間設定がパーフェクトオーダーには1番見やすい。
移動平均線と価格との乖離
移動平均線からあまりに現在の価格が離れる(乖離)ことを移動線の乖離と言う。グランビルの法則の8つのシグナルのひとつにもなっている。
価格は基本的に移動平均線に戻ってくるという事から、大きく価格が移動平均線から乖離してきた場合は戻りを狙ってのエントリーというものだ。
これは簡単に言うと揺り戻しを狙ったエントリーと言えるだろう。しかし乖離率だけでエントリーするのはおすすめできない。特に揺り戻しの場合は大きな下落があった次の瞬間にショートカバーする事になり、リスクが非常に高くなる。
さらに底値だと思ったところからさらに乖離していく場合もあり、乖離した状態が続くと移動平均線も現在の価格のところに近づこうとする。
つまり、価格が移動平均線に近づいていくだけでなく、移動平均線が価格に近づいてくるという状況も当然あるという事だ。
水平線など相場状況を判断して、ここが転換点だとして乖離からのエントリーを狙うのならまだしも、初心者のうちに乖離率というだけでのエントリーは絶対にしてはならないトレードだ。
200日移動平均線を使うレジスタンス、サポート
冒頭でも説明したが、200日移動平均線は過去の長期の平均価格なので優位性に優れている。特に週足など時間足が長ければ長いほど強力なレジスタンス、サポートの役割を果たすので、移動平均線を表示させるならオススメの設定だ。
200日移動平均線は長期足ならライン分析のような認識で使う事もできる。
【日足】
【週足】
上記チャートは週足、日足のチャートに200日移動平均線を表示させているが、200日移動平均線がかなり強い抵抗帯になっているのが分かるだろうか?自分のチャートでも検証してみよう。
まとめ
移動平均線は非常に見やすく親しみやすいテクニカル分析だ。移動平均線は設定した過去の値動きの平均をグラフ化して見る事のできる優れたインジケーターで、テクニカル分析インジケーターの基本と言っても良い。
しかし、決して移動平均線だけでエントリーのタイミングを決めるような事はオススメしない。相場で最も大切なのは値動きであり、移動平均線はチャートの邪魔にならないように薄く表示させる事をオススメしたい。
移動平均線を表示させる事によって、チャート全体の値動きが見にくくなったら本末転倒だからだ。
移動平均線はトレンド系のインジケーターになるが、もちろんオシレーター系のインジケーターにも移動平均線は多く使われているので、まさに移動平均線はチャート分析の基本と言えるだろう。