ランダムウォーク理論|相場についての規則性はないのか?

ランダムウォーク理論は相場の不確実性について説明されている相場理論のひとつだ。相場で言えば上昇か下降をする確率は常に50%であるというものである。

ランダムウォーク理論は最終的に資金を増やす上で重要な考え方であると同時に、これからトレードのパフォーマンスをあげるために、どういった考え方が必要なのかを考えさせられる理論でもある。

今回はランダムウォーク理論についてお話しするので、興味のある方は参考にしてほしい。

目次

ランダムウォーク理論とは

ランダムウォーク理論を提唱したのはルイ・バシェリエというフランスの学者である。ランダムウォーク理論の基本的な考え方は「相場の値動きは不確定であり、これから上昇する確率と下降する確率は50%」というものだ。

ルーレットで赤が出るか黒が出るかの単純なギャンブルを想像してほしい。赤が3回連続して出ていたら、次は黒が出るのではないか?という期待は高くなる。もし、5回連続で赤が出てしまったら、多くの人は次は黒がでるのではないか?という期待を持つだろう。

しかし、この期待には合理的な根拠がない。なぜなら、ルーレットは1回あたりの確率が50%であり、前回の結果が次の結果に影響を与えることはないからだ。つまり、例え5回連続で赤が出ていたとしても、次の勝負で黒が出る確率はやはり50%になるのだ。

つまり、どれだけ分析、予測をしたとしても、ランダムで動く相場の値動きに対して、予測が的中する確率は常に50%であるということになり、テクニカル分析やファンダメンタル分析という分析理論のすべてを否定するような内容になっている。

ランダムウォーク理論は株価についての値動きを提唱しているが、為替(FX)などに対しても分析理論として用いられることが多い。

ランダムウォーク理論の正論性

よくランダムウォーク理論とテクニカル分析は非対称な考え方として比較されるが、果たしてどちらの考え方が正論なのか?確率が50%であれば、最終的に90%以上のトレーダーが負けることはありえない。

仮にランダムウォーク理論に正論性があるとしよう。ならば相場において上昇下降の確率は50%であったとしても、故意に負け続ける要因が他にも存在することになる。

90%以上のトレーダーが負けているという事実

ランダムウォーク理論により、上昇するか下降するかの確率が50%であるならば、なぜに大部分のトレーダーは負けてしまうのか?これはある意味おかしな話である。

多くのトレーダーが負ける要因として、確かにランダムウォーク、確率論として負けているパターンもあるだろう。ただし、それだけでは90%以上が負ける理由にはならない。

トレーダーが負ける要因の多くは心理的なものである。優位性のある局面でエントリーしたとしても、理屈のある利益確定ができていない。損失の確定を先延ばしにする。

それはプロスペクト理論にもあるように、人間はリスク回避の無意識行動が埋め込まれている。人間の脳の90%以上を支配している無意識こそがトレーダーを負けさせる本質的な理由だ。

最終的な利益を生むためには、リスク回避ではなく「リスクを受け入れる脳」が必要になる。つまり、本来の行動理論とは真逆の行動を起こさなければならない。

これを変えるためにはそれ相当な努力が必要なのはいうまでもなく、トレードノートなどで毎回のトレードを脳に叩き込む必要性がある。

テクニカル分析的に動くときはある

トレンドラインや水平線など、相場では価格の節目で値動きが止まることがある。レジスタンスやサポートラインの存在だ。もちろんトレンドが発生することもあれば、ある一定のフォーメーションを描くときもある。

もしも相場が必ずランダムで動いているとするならば、「ある一定の確率の高い値動き」に関しては説明がつかない。

ランダムウォーク理論は間違っているのか?

必ずしもランダムウォーク理論を否定するつもりはない。しかし、過去の値動きは長期間で見ればファンダメンタル要因を含み、短期的に見ればテクニカル的な要因で動いている。

次に動く値動きについて「上に行くか下に行くか分からない」という考えは重要なスタンスであり、トレーダーとして忘れてはならない基本的なものだ。

ランダムウォーク理論で学ぶべきものは値動きの不確定要素であり、本質的な要素である。

逆正弦法則により勝敗はどちらかに偏る

逆正弦法則は、ブラウン運動の滞在時間である分布関数が逆正弦関数(正弦関数sin(x)の逆関数)であることからそう呼ばれている。

ランダムに動くというと、確率50%を行ったり来たりといったイメージがあるが、実はそうでもない。回数を重ねるごとに最終的に50%に収束するとしても、そこに行き着くまでには必ずどちらかに偏りが出る。

もちろん上昇、下降どちらに偏るかはわからないが、この隔たりを逆正弦法則で証明できるのだ。偏りが大きくなる過程、収束する過程をトレンドと呼び、確率が拮抗している状態をレンジと仮定することができる。

逆正弦法則の注意すべき点は高値、安値、どちらも偏っている時間と距離は同じではないということであり、ランダムウォークだからといって、相場において必ずエントリーした場所に価格が戻ってくるといったわけではない。

なぜなら、エントリーした場所から上昇したとして、上昇した地点から50%の確率でどちらに動くかわからないというものだからだ。

効率的市場仮説において価格の価値は常に変動する

効率的市場仮説とは、相場の価格は常に適正な価格を反映し、効率的に動いているという考え方だ。つまり、レートによる買われすぎ、売られすぎといったものはなく、短期間においても常に適正な価格が織り込まれているといった理論になる。

つまり、現時点で適正な価格が織り込まれているので、次に上昇するのか下降するのかは誰にもわからないといったものだ。これは効率的市場仮説のウィーク型と言われる考え方であり、ランダムウォーク理論と確率的な考え方は同じである。

まとめ

今回はランダムウォーク理論について解説してきたが、結局のところ相場はどちらに動くか分からないものである。これから先の相場展開など誰にも分からないといったスタンスは、頭に叩き込んでおかなければならない重要事項である。

ただし、絶対に優位性のある場面を見つけられないわけではない。大切なのはリスクをどこまで許容し、どこまでの利益をとっていくのかを明確にすることだ。

ランダムウォーク理論を理解することによって、テクニカル分析には意味がないのではないか?と思われるかもしれないが、あながちそうでもないと筆者は考える。

前述でもお話ししたように、90%以上のトレーダーが負けているという事実こそが、確率50%というランダムウォーク理論とは大きくかけ離れた事実であり、負ける確率が90%以上あるのならば、勝つ確率も必ずあるというのが理論上の答えになる。

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